サウジアラビアのムハンマド皇太子は22日、隣国のアラブ首長国連邦(UAE)を訪問した。サウジの国営通信が伝えた。10月にサウジ人記者がトルコの自国総領事館で殺害された事件後、関与が疑われる皇太子が外遊するのは初めて。友好的なアラブ諸国への訪問で結束をアピールし、サウジ王室の盤石さを誇示する狙いがあるとみられる。
【特集】事件の経緯は、王室の関与は…サウジ人記者殺害疑惑
UAEはエジプトなどと並び、サウジ人記者ジャマル・カショギ氏の殺害事件でサウジ擁護の姿勢をとり続けている。ムハンマド皇太子は、アブダビ首長国のムハンマド皇太子と会談し、両国の戦略的な協力関係や地域情勢について話し合ったという。
国営通信によると、外遊は父親のサルマン国王が「サウジの地域的、国際的な関係強化」のために指示。今後、近隣アラブ諸国を訪れるというが、国名は明らかにされていない。AFP通信は、チュニジアなども訪問すると伝えた。
事件をめぐってはトランプ米大統領が20日、ムハンマド皇太子の責任を追及しない考えを改めて示し、サウジ擁護の姿勢を鮮明にした。皇太子は今月末から開かれるアルゼンチンでの主要20カ国・地域(G20)首脳会議に出席する見通しで、トランプ氏やトルコのエルドアン大統領、ロシアのプーチン大統領と会談する可能性がある。
一方、AFP通信などによると、デンマークは22日、サウジへの武器輸出を凍結すると表明。フランスは同日、事件に関与したとしてサウジ人18人に対して同国への入国を禁止する制裁を決めた。(ドバイ=高野裕介)