大阪都構想の是非を大阪市民に問う住民投票について、大阪維新の会(代表=松井一郎大阪府知事)は来年夏の参院選と同日実施を目指す方針を固めた。来春の統一地方選直後を目指していたが、日程的に難しくなったため転換した。2025年開催の大阪万博決定を追い風にしつつ、住民投票の前提となる都構想案とりまとめを本格化させる。
複数の維新幹部が明らかにした。維新政調会長の吉村洋文大阪市長も4日の朝日新聞のインタビューで「参院選と同日が有力な選択肢だ」と語った。
都構想は大阪市を廃止して東京23区のような特別区に再編する制度改革で、住民投票実施には府と大阪市両議会での議決が必要。維新は両議会で最大会派だが過半数に足りず、第2会派の自民党は都構想に反対。両議会で第3会派の公明党の協力が欠かせない。
維新は当初、今秋の住民投票実施を目指したが断念。府市両議会が改選を迎える統一選に集中したい公明に配慮し、統一選直後に先送りした。しかし、公明が協議に消極的で、住民投票に向けた都構想案づくりは停滞。維新幹部は「(統一選直後は)物理的に無理」と語った。
一方、松井氏は「(議員の)任期内でものごとを進めるのが政治家の職責」と繰り返し主張。都構想案とりまとめは「譲れない一線」(維新幹部)になっている。
そうした状況を踏まえ、維新は年度内に都構想案をまとめ、統一選後の5月ごろに両議会で議決する日程を想定。周知期間を踏まえ、参院選と同日に住民投票を実施する方針を固めた。万博誘致の実績を背景に、年内に都構想案を話し合う法定協議会を開き、公明に強く協力を求める構えだ。
ただ、公明は現時点では「参院選後まで住民投票は無理」との立場で、協議は難航する可能性がある。また、都構想案がまとまっても統一選で維新が議席を減らし、公明と足して過半数に届かなかった場合、住民投票は頓挫する。
都構想の是非を問う住民投票は15年5月に実施。わずかの差で否決された。維新は再実施の機会を探ってきた。(楢崎貴司、吉川喬)