文部科学省は25日、不適切な医学部入試の結果、追加合格者を出した大学が来年度の定員を超過することを認めると発表した。定員減のしわ寄せが、来春の受験生に集まることを避ける狙いがある。ただ、不適切な入試を行っていたと発表した9大学のうち、6大学は救済策などを公表しておらず、対応が遅れている。
医学部不適切入試で定員超過 「特例的に認める」文科省
柴山昌彦文部科学相は25日の会見で「受験生が安心して入試に臨むことができるよう」、来年度は特例的に定員超過を認めると発表した。対象となるのは、文科省が「不適切入試」と認定した東京医科大、昭和大、神戸大、岩手医科大、金沢医科大、福岡大、北里大、順天堂大、日本大の9大学で、超過分は2020年度から5年を上限に定員を減らして解消するよう求める。直前まで「定員増は厳しい」としていたが、医師数を調整する厚生労働省と折り合い、実質的な方針転換となった。
娘が1浪中の女性は「試験直前まで受験生を振り回して、なんだと思っているのか」と、ため息をつく。娘は不適切入試を公表した大学も受験予定だが、定員減の影響を想定して出願先を増やすつもり。女性は「受験料はばかにならない。定員が少し増えるのであれば、娘と相談して出願先をもう一度考えたい」。
一連の問題の発端となった東京医科大は、すでに17年度、18年度分の不合格者44人の追加合格を認める一方、その分を19年度一般入試の定員から減らすことを公表している。同大の広報担当者は25日、「詳細を把握していないため、コメントできない」と話した。ただ、入学の意向を確認しながら、定員を理由に「再不合格」とした5人については「合否を変えることはない」とした。順天堂大は最大48人、日本大は最大10人の追加合格を認め、その分19年度の定員を減らす方針だ。
6大学は、追加合格の有無も明らかにしていない。10月中旬に会見した昭和大は「不利益を受けた受験生への対応を検討する」としたが、第三者委員会の設置や救済策を聞く複数回の問い合わせに対し「回答はしない」とした。金沢医科大も同様に「回答は差し控える」とコメントした。
ある私立大の担当者は「不適切入試で不合格になった人数が少ないので救済策はいらないと思っていた。だが文科省が『速やかに救済すべきだ』と言うので検討中」と語った。(矢島大輔、円山史、貞国聖子)