見慣れない若者たちが、近所に住んでいることに気づいたのは、朝の犬の散歩中のことだ。
京都市伏見区の上村強志(つよし)さん(72)は、4年前に妻を亡くしたのを機に、タクシー運転手の仕事を辞めた。妻の日課だった一日3回の犬の散歩が、数少ない外出の機会になった。
ちょうどその頃、近くの一軒家から出勤する若者4人を見かけた。あいさつしてみると、「おはようございます」と返ってきた。ベトナムから働きに来た技能実習生で、この家で共同生活をしながら近くの板金工場で働いているという。
日本で働きながら技術を学ぶ外国人技能実習生は年々増え、現在約28万人。製造業や建設業などの人手不足を補う一方、一部企業での過酷な労働環境や、地域での共生が課題となっている。技能実習生にまつわるそんなニュースに接したのは、つい最近のことだ。
上村さんは散歩で会うたびに、10分ほど立ち話をするようになった。ギターが好きな若者のために、昔使っていた教本をあげたり、お裾分けのお返しにベトナムのお茶をもらったり。お互いの家に顔を出す関係にもなった。
「開け放しの窓から騒ぎ声が聞…