トランプ米大統領は15日、議会承認を得ないでメキシコ国境での壁建設費を捻出するため「国家非常事態」を宣言した。大統領権限で国防総省などの予算を組み替えて約80億ドル(約8800億円)を捻出する。野党・民主党は「違法」と激しく反発。すでに市民団体が差し止めを求めて提訴したほか、カリフォルニア州なども続く構えだ。
トランプ氏、窮余の非常事態宣言 共和党からも慎重論
トランプ氏、壁建設で国家非常事態宣言へ 野党は猛反発
トランプ氏はホワイトハウスでの記者会見で「我々は麻薬やギャング、人々の侵略を受けている。容認できない」と語った。「違法薬物や人身売買が流れ込んでいるのに、遮蔽(しゃへい)物も無くて防げないようでは、米国を再び偉大にすることは難しい」とも強調。2020年大統領選での再選に向け、厳しい移民政策を望む熱狂的な支持層を意識していることを隠さなかった。
これに対し、民主党トップのペロシ下院議長とシューマー上院院内総務は15日の共同声明で「存在しない危機を理由に法的根拠もなく非常事態宣言を行うことは、著しく憲法に違反している」と指摘。「軍と国の安全のために緊急に必要な防衛予算を盗用することは米国の安全を損ねる」と批判した。反対決議を近く下院に提出するほか、公聴会に政府関係者を呼び、宣言の違法性を追及する。
また、メキシコと国境を接するテキサス州南部の壁の建設予定地の地権者や自然保護協会を代表して市民団体「パブリック・シチズン」は同日、非常事態宣言の差し止めを求めてワシントンの連邦地裁に提訴した。大統領権限を逸脱しており違憲だとしている。
全米最大の人権団体「全米市民…