第12回朝日杯将棋オープン戦(朝日新聞社主催)の本戦・準決勝、渡辺明棋王(34)と千田(ちだ)翔太六段(24)の対局が2月16日午前、東京都千代田区の有楽町朝日ホールで指され、先手番の渡辺棋王が105手で勝って決勝進出を果たした。一次予選から7連勝して4強まで勝ち上がった千田六段にを破った渡辺棋王は16日午後2時半開始の決勝で、藤井聡太七段(16)と対戦する。
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渡辺棋王は1984年4月生まれ、東京都葛飾区出身。タイトル獲得は通算20期(竜王11期、王座1期、棋王6期、王将2期)。現在、棋王戦五番勝負では挑戦者の広瀬章人竜王を相手に2連勝し、タイトル防衛にあと1勝。王将戦七番勝負では久保利明王将に挑戦中で、こちらは3連勝して、タイトル奪取にあと1勝。名人戦・B級1組順位戦でもA級復帰を早々に決め、2月14日も郷田真隆九段に勝ち、無傷の11連勝。絶好調だ。朝日杯将棋オープン戦は2012年度の第6回で優勝。今回の朝日杯はシードで本戦から出場し、佐藤康光九段、深浦康市九段に勝って、4強進出を決めた。
千田六段は1994年4月生まれ、大阪府箕面市出身。森信雄七段門下。今回の朝日杯は一次予選から登場。一次予選では阿部光瑠六段、村中秀史六段、中川大輔八段に3連勝、二次予選では森内俊之九段、郷田真隆九段に2連勝して、本戦出場を決めた。本戦では羽生善治九段、渡辺大夢五段に連勝し、ベスト4入りを果たした。
2人は、2016年度の第42期棋王戦で五番勝負を戦っている。双方2勝2敗で最終局にもつれ込み、第5局を制した渡辺棋王がタイトルを防衛。渡辺棋王の勝負強さと、千田六段の実力がトップクラスであることを印象づけたシリーズだった。
本局は、対局開始の30分ほど前に行われた振り駒で、先手番が渡辺棋王に決まった。定刻の午前10半時に公開対局が始まった。
居飛車を得意とする両者だけに、相居飛車戦に進んだのは大方の予想どおり。ただし、渡辺棋王の「雁木(がんぎ)」という駒組みに対し、後手の千田六段が、△7二金~△6一玉~△8三金~△7二玉と、大盤解説の佐藤名人も「あまり見たことが無い」と言った、珍しい駒組みを選んだ。終局後、「珍しい形のようですが」と記者が尋ねると、千田六段は「人間同士の対局では、少ないですかね」とポツリ。AI(人工知能)を活用した研究の深さで知られる千田六段だけに、入念な事前研究をうかがわせた。
途中図が、感想戦で盛んに採り上げられた局面。本譜で千田六段は△1六歩と打ったが、代えて(1)△8六歩や(2)△5五金の方が、後手にとっては良かったようだ。本譜は、△1六歩を打ったため、持ち歩の数が少なくなった千田六段が、その後、苦戦に追い込まれる変化が目立った。
終了図の局面となり、午後0時13分、千田六段が投了した。別室の大盤解説会場では、熱戦を繰り広げた両対局者への拍手が起きた。
記者の取材に対し、勝った渡辺棋王は「朝日杯の決勝は久しぶり。今回はお客さんも多いので、頑張りたい」と話した。敗れた千田六段は、自ら仕掛けた場面と、途中図の2カ所を、ポイントとして挙げ、「(序盤から)意欲的に指してみたのですが」と話した。(佐藤圭司)