第77期将棋名人戦・C級1組順位戦(朝日新聞社、毎日新聞社主催)最終11回戦が5日、東京と大阪の将棋会館で一斉に指され、高校生棋士の藤井聡太(そうた)七段(16)と師匠の杉本昌隆八段(50)がともに勝ったが、藤井七段は一つ上のB級2組への昇級を順位の差で逃した。杉本八段は自力で昇級を決めた。藤井七段の順位戦での連続昇級は実現せず、名人への道の途中で足踏みとなった。
藤井聡太七段、昇級ならず 師匠の杉本昌隆八段は昇級
藤井聡太 名人への道
順位戦の同じクラスでの師弟同時昇級が実現すれば32年ぶりだったが、実現しなかった。
今期C級1組には39人が参加。それぞれ10局指し、上位2人が昇級できる。最終戦を前に、藤井七段や杉本八段ら5人に昇級の可能性があった。ただ、順位戦のルールでは勝ち星が同じ場合、今期の順位が上の棋士が優先されるため、杉本八段は勝てば昇級が決まるが、C級1組に昇ったばかりの藤井七段は順位が低いため、自分が勝つとともに、上位の競争相手3人のうちの2人が負けないと昇級できない状況だった。
この日、藤井七段は大阪市福島区の関西将棋会館で都成竜馬(となり・りゅうま)五段(29)に、杉本八段は東京都渋谷区の将棋会館で千葉幸生(さきお)七段(40)にそれぞれ勝った。昇級争いで二番手だった杉本八段に続き、トップを走っていた近藤誠也五段(22)も増田康宏六段(21)に勝ち、昇級者2人は近藤五段と杉本八段に決定。近藤五段はB級2組へ昇級したことで5日付で六段に昇段した。藤井七段は同じ勝ち星ながら順位の差で涙をのんだ。
順位戦の同じクラスで師弟がそろって昇級すれば、1986年度の第45期B級2組順位戦で師匠の大内延介(のぶゆき)九段(故人)と弟子の塚田泰明(つかだ・やすあき)九段(54)がそろってB級1組に昇級して以来、32年ぶりだった。
終局後、藤井七段は「前回(の10回戦の近藤誠也五段戦で)敗れてしまったので(昇級できなかったのは)仕方が無かったかなと思います。また来期も一局一局積み重ねていければ」と淡々と話した。昇級を決めた杉本八段は「藤井七段と一緒に昇級するのが夢だった。自分だけ上がってしまって申し訳ない。今回は藤井七段と昇級争いをするのが目標で、昇級は幸運だった。順位戦は実力のある人が上がるべきだと思う。自分にその資格があるのか、という葛藤を抱えながらの対局だった。今期の対局は失ったものを取り返すための対局。昇級を諦めかけた時期もあったが、諦めなければそれなりの結果が出せるということが証明できて良かった。棋士としては最高の気持ちだが、師匠としては非常に複雑な思いがある。ただ、藤井七段は必ず近いうちに昇級してくるので、もう一度ともに戦える日を待っている」と語った。(佐藤圭司)
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昇級を決めた近藤誠也五段は「最後は負けだと思った。昇級できて良かった。1月に負けて後がない状況だったが、藤井(聡太七段)戦に勝って自力に戻った。9局目の勝利は大きかった」と話した。