経済インサイド
オーディオやカーナビなどで独自の存在感を放ってきたパイオニアがこの春、香港のファンドの傘下に入った。資金難から抜け出せず、外資のもとで経営再建をめざすことになったのだ。「技術」にとことんこだわってきた名門メーカーは、なぜ沈んだのか。これからどこに向かおうとしているのか。(文中敬称略)
これまでの「経済インサイド」
引導
主力のカーナビが激しい価格競争にさらされるなどして、パイオニアは2017年3月期、18年3月期と2年連続で純損失(赤字)を計上していた。
それでも、18年6月に常務から社長に昇格したばかりの森谷浩一(61)は強気な姿勢を崩していなかった。
採算が厳しかった自動車メーカー向けの事業に限って他社と資本業務提携し、開発費などの一部を提携先に負担してもらえば、経営の自主性は守り抜ける――。
そんな目算を立てていた森谷だが、提携先の候補になり得る企業の目は冷ややかだった。電機メーカーは「技術ありきの会社で費用ばかりかさむ」(幹部)と無関心を決め込んでいた。ある自動車部品メーカーとは具体的な交渉に入ったが、パイオニアの事業が赤字続きだと知ると手を引いていった。
交渉が難航するうちに、恐れていた「引導」が渡される。メインバンクから、融資の借り換えには応じられないと通告されたのだ。
資金繰りのメドが立たなければ、技術力を盾にした強気の提携交渉はできない。逆に交渉相手から足元をみられ、一部事業の「切り売り」を求められるようになった。
森谷はかたくなに拒んだ。「事業を切り売りして資金を得ても、半年ぐらいしか延命できない」と思ったからだ。
会社を解体しないと約束して交渉を続けてくれた相手が一つだけあった。香港のファンド「ベアリング・プライベート・エクイティ・アジア」だ。昨年12月7日、1020億円の資金支援を受けるのと引き換えに、全株式を譲渡する道を選んだ。
1938年の創業以来、80年にわたって守ってきた自主経営が事実上、幕を閉じた瞬間だった。
謝罪
経営譲渡の承認を得ようと翌19年1月に開いた臨時株主総会は、荒れた。
「再生プランが見え…