熊本にもう一度ベルトを届けたい――。2016年4月に起きた熊本地震で被災した世界ボクシング機構(WBO)ミニマム級元王者で熊本市在住の福原辰弥(29)=本田フィットネス=が雪辱を期し、5月31日にタイで世界ボクシング評議会(WBC)同級世界タイトル戦に再挑戦する。
「世界戦のチャンスはなかなかもらえない。最後という気持ちでやる」。25日に熊本市内であった記者会見で福原は覚悟を語った。17年2月にWBOミニマム級暫定王者となり、同4月に正規王者に昇格。熊本県内のジム所属選手で初の世界王者となった。しかし、同8月の初防衛戦に敗れ、同11月にWBC同級王者のワンヘン・ミナヨーティン(33)=タイ=に挑んだが、判定負けした。
他団体での世界戦の話もあった中、「一度負けた相手。もう一度やりたい気持ちが強かった」と再戦にこだわった。今回リベンジマッチに挑むワンヘンは52戦全勝(18KO)の難敵だ。50戦無敗で世界5階級を制覇したフロイド・メイウェザー(米国)を上回る無敗記録を続ける試合巧者。前回は足を使うアウトボクシングに屈した。「敵地なのでKOしないと勝てない」。厳しい戦いを見越してサーキットトレーニングなどでスタミナを強化している。
出身地の熊本市のジムに所属する。3年前の熊本地震では同市内の実家の家財道具が散乱し、同居していた両親らと1週間ほど車中泊を経験した。ジム仲間も被災した。
前震の発生から3年を迎えた今月14日がプロデビューから11年の節目だった。「テレビのニュースで当時の地震の映像を見て、頑張らないとなという気持ちになった」。前回対戦で王座に返り咲けなかっただけに「熊本を盛り上げるためにも、ベルトを持ち帰って、いいニュースを届けたい」と誓う。
今回は一昨年12月に結婚した妻・愛美さん(29)が手料理で減量などをサポートし、背中を押してくれる。「嫁も養っていかないといけない。チャンピオンになって一緒に喜びたい」
平成元年生まれの福原は、元号が「令和」に変わる5月にちょうど30歳を迎える。「5月は世界戦に臨む日本選手が多い。『令和最初』の世界チャンピオンにはなれないかもしれないが、しっかり勝ちたい」(甲斐弘史)