「つらい記憶が全部かな」。レスリング女子の登坂絵莉(東新住建)は、金メダルに輝いた2016年8月のリオデジャネイロ五輪以降、苦悩の日々を送る。古傷の痛みが勝負強さに影を落とす。「逃げたくなるときもあります。でも、この感情には今しか向き合えない」。東京五輪の出場権獲得は崖っぷち。でも、あきらめない。
昨年12月の全日本選手権準決勝。終盤、同点に追いついたが、そのままではビッグポイント(得点価値の高さ)で相手の勝ちだ。気付かぬうちにブザーが鳴った。「頭が真っ白になって、ごっちゃになった。悔いがある」
試合勘が戻っていなかった。リオ五輪後の17年1月、慢性的に痛みを抱えていた左足親指付け根の骨を削る手術を受けた。国際舞台から遠ざかり、国内での真剣勝負の場も少なかった。
無意識に患部をかばううちに負荷がかかり、今度は左足首と左ひざを痛めた。17年12月の全日本選手権は途中棄権し、また、メスを入れた。
「痛みを頭が覚えていて、タッ…