広島県福山市の山陽染工は、伝統織物「備後絣(びんごかすり)」の染色加工を担うために創業したメーカーだ。今は、米国の有名ブランド、ラルフローレンなどの生地も染め上げている。そんなビジネスを支えているのは、「我が社だけ」の技術だ。
藍色の生地が、大きなローラーの下を通っていく。すると生地には、白いタカが浮かび上がった。
「段落ち抜染(ばっせん)」と呼ばれる手法だ。ローラーからは、生地の色を抜くための薬剤がしみ出している。色の抜け方は均一ではなく、柄には濃淡やグラデーションがつく。
松本壮一郎社長(47)は「うちだけの技術で、ラルフローレンなどの服に使われている」と説明する。デニム生地との相性もよい。
会社は戦後、複雑な柄が描かれたアフリカ向け民族衣装の生地を量産し、成長した。しかししばらくすると、アフリカの人たちの生活習慣が変わり、この生地の需要がしぼんだ。主力商品の転換をしたいが、無地の生地に色を付けるような単純な仕事は、海外との競争が激しい。
注目したのは創業時から培ってきた「抜染」だった。複雑な柄でも、一気に染め上げられる機械があれば、大きな差別化になると考え、研究開発に着手。2014年に実用化にこぎつけた。
アパレルメーカーに服の生地を供給するだけではない。実用化に先駆けた13年には、自社ブランドを立ち上げ、抜染で柄を付けた着物やスニーカーづくりにも乗り出している。
松本社長は言う。「海外に技術は負けていない。価格競争の土俵に乗らないよう、チャレンジを続ける」
■脱・大量生産へ提…