緊迫するアメリカとの関係を取り持とうと、安倍晋三首相がイランを訪問しました。会談相手は、ロハニ大統領と最高指導者ハメネイ師。ところで、この「最高指導者」って、どんな立場の人なのでしょうか。大統領よりも偉いの?何する人なの?素朴な疑問に、イランに詳しい日本エネルギー経済研究所・中東研究センターの研究理事、坂梨祥さんが答えてくれました。
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――イランには最高指導者という「役職」があるんですか。
他国でもそういう呼び名の付く人はいますが、イランの場合、役職としての「最高指導者」というポストがあるという意味で独特です。
というのも、イランはイスラム教を国教とするイスラム共和国で、国民の多くがイスラム教のシーア派。さらに大半がその中の「12イマーム派」という宗派に属しています。最高指導者は、これに基づく統治体制のトップなのです。
宗派のことを簡単に説明すると、シーア派はイスラム教の預言者ムハンマドの血筋を重視し、その子孫こそが正統な指導者と考えます。中でも「12イマーム派」は、ムハンマドの血を引く12代目のイマーム(指導者)に着目。9世紀にその12代目のイマームは神隠しのように突然姿を消してしまったという史実があるのですが、それを「お隠れイマーム」と呼び、「イマームが隠れている間は正統な指導者はいない」という考え方をします。
この「お隠れ」の間、イマームの代わりに共同体を教え導く存在として誕生したのが、最高指導者なのです。
――存在感が大きいようですが、どういう立場なのでしょうか。
イランの今の体制の最高権力者…