トランプ米政権が「世紀の取引」と呼ぶ新たな中東和平案の一端が、6月下旬に示される見通しだ。イスラエルとパレスチナの根深い政治問題を先送りし、まずは経済支援で和平に道筋をつける狙いがある。だが、パレスチナは強く反対し、イスラエルの政局も安定しておらず、和平の道のりは厳しいと予想されている。(ワシントン=渡辺丘、エルサレム=高野遼、ドバイ=高野裕介)
イスラエルは建国以来、パレスチナと70年以上、領土をめぐり争ってきた。パレスチナ側は自治を認められ、暫定的な境界を挟んでイスラエルと共存を続けるが、争いは絶えない。
歴代米政権や国際社会は、パレスチナを国家にする「2国家共存」を唯一の解決策としてきた。だが、イスラエルはパレスチナ人の暮らしてきた土地へのユダヤ人入植を進めており、和平協議は進展の気配もない。
この難問を「世紀の取引」で解決する意欲を示してきたのが、2017年に就任したトランプ米大統領だ。準備中の和平案は「政治面」と「経済面」に分けて公表される方向だ。
まず25~26日にバーレーンで、パレスチナ経済支援会合を開き、経済面のみを示すと報じられている。一方、国境線の画定やエルサレムの地位、パレスチナ難民の帰還などの難問を含む政治面は、いずれ受け入れをパレスチナに迫る「アメとムチ」戦術とみられる。
トランプ氏の娘婿で、中東和平を担当するクシュナー大統領上級顧問は「過去の論点にこだわっていては前進はない」と強調する。
トランプ氏は昨年9月、和平案を遅くとも19年2月には出す意向を示していた。大幅な遅れの理由は、盟友であるイスラエルのネタニヤフ首相の事情だ。
和平案はイスラエルに一定の譲…