高校野球応援の花形といえば、迫力満点の吹奏楽。応援を「観戦」するため毎年甲子園に足を運び「高校野球を100倍楽しむ ブラバン甲子園大研究」などの著作もあるライターの梅津有希子さん(43)に、その魅力を語ってもらった。
キャベツ両手に「勝利あれ」 伝統の野球応援の誕生秘話
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甲子園と吹奏楽を題材にした映画の監修をすることになり、2013年に甲子園へ取材に行ったのがきっかけで、野球の応援の研究を始めました。中・高と吹奏楽部の強豪校で過ごしましたが野球応援の経験はなく、吹奏楽の全国コンクールで一緒だった学校の生徒が、球児のために汗と涙を流して演奏する姿に、衝撃を受けたのです。
吹奏楽応援の魅力は、音楽の力で選手を後押しできること。チャンステーマを演奏して本当に本塁打が出たりすると「音楽にこんな力が秘められているとは」と思える。選手が吹奏楽の応援を楽しみにしてくれているのも、部員としてはうれしいものです。
群馬の名物応援と言えば、得点が入ると頭の上で「スーザフォン」と呼ばれる白くて大きな金管楽器をくるくると回すしぐさ。元々はマーチングの技の一つですが、前橋育英や前橋商などが取り入れており、他県ではあまり見たことがない気がします。
最近は全国的に「アゲアゲホイホイ」が流行しています。報徳学園(兵庫)が元祖で、3年ほど前からSNSなどで広まりました。強豪校の応援に憧れて他の学校がまねをする形は昔から変わりませんが、今ではSNSで名物応援の「拡散」も早いと感じます。
野球応援を楽しむコツは「人間観察」。スタンドを見ていると、ベンチに入っていない野球部員たちがオリジナルの振り付けで踊っていたり、吹奏楽部の先生や指揮者の生徒に演奏のタイミングを指示してあげていたりと、ほほえましい場面もたくさんあります。
次に何を演奏するかを指示するために掲げる「曲目ボード」もデザインに凝った学校がある一方、段ボールに書いてあるだけの学校もあったりと、よく見ると個性豊かで楽しいです。その学校独自の呼び方もあり、作新学院(栃木)は「アフリカンシンフォニー」を「OH作新」、花咲徳栄(埼玉)は「We will rock you」を、入場曲に使っていた格闘家のアンディ・フグにちなんで「フグ」……。いつもと違う視点で眺めると、ひと味違う楽しみ方ができるかもしれません。(聞き手・松田果穂)