喜碧さんは、「あの頃、自分が働いていた店では、1家族につきトイレットペーパーは1パックまでと制限していた。何人で来店しても、1グループで買えるのは1パックだけだった。自分が見た感じでは店内は整然として秩序が保たれていた。購入制限に気づかないでレジに2パック持ってくる人もいたが、店員に注意されると1パックはすぐにあきらめ、クレームをつけることもなかった」と話した。
トイレットペーパーが売り切れ商品のトップに立つのはなぜ?
「心配を解消するには、買いだめするしかない」。マスク争奪戦の騒ぎが収まってきたと感じている中国のネットユーザーたちは、トイレットペーパー争奪戦をいまひとつ理解できない。「買いだめは理解できる。でもなんでトイレットペーパーなの?食べられないし、命にも関わらないし、場所も取るのにどうして?」。
経済学の「バンドワゴン効果」(多くの人が選択している現象によりさらに選択する人が多くなる効果)でトイレットペーパー買いだめ現象を説明する人がいる。体積の大きなトイレットペーパーは視覚的にインパクトが強いという。
英BBC放送の報道によれば、オーストラリアのグリフィス大学のグレーズ教授は、「想像してみると、50ロールのトイレットペーパーがあっと言う間に棚から消えた後の空虚感は、朝食用の豆の缶詰50缶や消毒液50本が消えた場合よりも目を引く。よってトイレットペーパー争奪戦では人々は無計画な後追いの行動を取りやすくなる」と説明した。
オーストラリアのニューサウスウェールズ大学のガーグ准教授は、「出遅れることへの恐怖」が原因であるとする。「他の人が何かの商品を争って買い求めている時に、きっと何か理由があるのだと考え、自分が出遅れることが心配になる」という。
周りの人がみなトイレットペーパーを買いだめしている時、自分は1ロールも買いだめしないでいることに耐えられるだろうか。買いだめという発想がなかったとしても、他の人が全部買ってしまって、自分が本当に必要な時に買えなくなることを心配しないだろうか。心配しているうちに、矢も盾もたまらず家から出て列に並んでしまわないだろうか。
ガーグ氏は、「大事なことはこの新型肺炎の状況がどうなるか誰もわからないこと、最終的にもっと悪化するかどうかわからないことだ。わからないから人は備えをして憂いを解消しようとする。これがなにがしかのコントロール感を得るためにできる唯一のことだ」と説明した。
トイレットペーパーは日常的な消耗品であり、すべての人にとって必要なものだ。データによると、2019年の世界の生活用の紙製品の売上高は2540億ドル(約28兆670億円)に達した。
トイレットペーパーがなくなって、仕方なく他のもので代用する場合、多かれ少なかれ違和感を感じることは避けられない。またトイレットペーパーは値段が安く保存もきくため、人々は「買いだめする必要がなくても、後で使えばいい。買いだめして正解だったら、買いだめしてよかったということになる」と考えがちだ。
もともと世界にはトイレットペーパー危機はない。買いだめする人が多くなれば、それが危機になるのだ。(編集KS)
「人民網日本語版」2020年3月24日