感染症という特殊な時期に、無人経済にとってより有利な応用環境が整ったが、ベテランベンチャー企業投資家の秦志勇さんは、「長期的にみて、無人経済の発展のカギはコスト的に引き合うかどうかにある」との見方を示した。
秦さんによると、生産サイドからみれば、無人のコストが本当に有人より安いかどうかだ。特に無人ロボットのバックヤードには運営メンテナンス要員、プログラマー、材料を補充する要員などが必要で、これまでのようなフロントヤードのサービス要員の人件費よりコストが安いかどうか。消費サイドからみれば、消費者に無人ロボットを選ぶより大きな動機があるかどうかだ。無人店舗での体験が有人店舗を上回らず、商品価格もそれほど安くなければ、消費者に無人を選択する理由はどこにあるか。
同社の孫麗副社長は、「当社も他のジャンルを検討しており、たとえば無人ミルクティはどうかと考えた。しかしミルクティは平均販売価格が約12元とすでに安く、無人なら5元まで下げないと商機はない。5元ではコスト回収が難しいため、今はミルクティ店の無人化は実行不可能だ。これは技術の問題ではない」と述べた。
野菜炒めを作る調理ロボットにも問題がある。簡単なサラダやステーキならいいが、中国の美食は幅広く奥深く、機械が正確に材料を計測しても、複雑な味を十分に再現することはできない。消費者にとってみれば、豚ヒレ肉の甘酢炒めや鶏のカシューナッツ炒めのような料理なら無人でも有人でも大して変わらないが、グルメにはワクワクした社交という役割もあり、そんな楽しい場面にあえて無機質なロボットを選ぶ理由もない。
無人小売が取り扱うのはコーヒー、茶飲料、ジュース、中国風クレープ、甘栗などの商品で、将来はさまざまな商品に対応した無人小売ロボットが誕生する見込みだ。しかし秦氏は、「そうしたロボットの応用が成熟レベルまでいくかどうかは、コストと利益の間にあるビジネスモデルに、有人店舗より優位性が備わるかどうかによって決まることが多い」と強調する。
しかし自動運転車について言えば、より大きな難点が技術であることは確かだ。感染対策期間中、自動運転車の応用は小規模なシーンに限られていた。隔離エリアの通路を自動運転の小型車が走り、家のドアの前で自動的に停止し、中の人を呼んで荷物を引き取ってもらう。実はこうした固定ルートの小型自動運転車は、数年前から一部の近代化工場や物流倉庫で幅広く応用されており、今回は特殊な環境に適応して応用シーンが「バージョンアップ」しただけだ。