関西電力が、発電所などで働いてアスベスト(石綿)関連がんの中皮腫などの病気で死亡し、石綿健康被害救済法に基づく労災時効の救済措置を受けた元社員について、労災認定の場合に準じて特別弔慰金を支払う社内規定を設けていたことが、19日分かった。関電は金額を明らかにしていないが、遺族の一人によると、6000万円弱を支給されたという。企業による石綿被害への上乗せ補償としては国内最高レベルとみられ、電力業界にとどまらず他企業にも影響を与えそうだ。
関電によると、同社の特別弔慰金制度は労災全般を対象に労災認定を受けた人に適用される形で設けられた。昨年3月に石綿救済法が施行され、労災申請の時効(死後5年)で労災認定を受けられなかった人も同法による認定で救済を受けることになった。
これを受け、関電は昨年9月、社内の特別弔慰金制度の対象に含めることを決定。今回の措置で、時効のため労災認定されなかったものの石綿救済法の認定を受けた4人が新たに特別弔慰金の支給対象となった。
関係者によると、火力発電所の保修に従事し、93年に中皮腫で死亡した50歳代の元社員の遺族からは同社に対し、補償や謝罪の要望が出ていた。この遺族には今年に入り、6000万円弱の特別弔慰金が支給されたという。
同社は標準的な支給額を公表していないが、国内では大手機械メーカーのクボタが、元従業員に対し、2500万~3200万円の上乗せ補償を支給しているケースなどがある。
電力業界では、発電所の保温材などに石綿含有製品を使用していたが、健康被害の詳細は不明。同社も実態解明の参考資料となる発生場所や発症時期、病名などは、「個人情報に当たる」として明らかにしていない。また、会社として病気と石綿との因果関係に関する調査は行っていない。
関電地域共生・広報室は「業務が原因の病気で苦しんだ人たちに会社として誠意を示すのが目的。石綿救済法で認定された人についても、労災と同様の扱いとすることにした」と話している。【宇城昇、野田武】