東京電力福島第1原子力発電所の事故で避難区域となり、全町避難が続く福島県富岡町で、野生のイノシシの「定住地域」が避難区域以外のイノシシに比べて大幅に広い105~240ヘクタールだったことが13日までに、福島県の調査で分かった。事故から4年近く人が住んでいない避難区域で、イノシシが活動範囲を広げたとみられる。
避難区域のイノシシの活動範囲と他地域との違いが明らかになったのは初めて。避難区域ではイノシシの目撃例が後を絶たず、住民の帰還や農業の再開への影響が懸念されている。県は「調査を継続して詳細な行動パターンが分かれば、効果的にわなを仕掛ける参考になる」としている。
環境省の特定鳥獣保護管理マニュアルによると、イノシシは「定住期」と「移動期」を繰り返す。定住期は数日~数カ月間、10~100ヘクタール程度の定住地域内で活動。移動期は2~5日間で、複数の定住地域の間を移動する。
福島県は2013年と14年のそれぞれ秋から冬にかけて、富岡町で捕獲した計3頭のイノシシの首に全地球測位システム(GPS)の装置を取り付け、活動パターンを調査した。
26~81日間、15分おきにイノシシの居場所を確認したところ、最も活動範囲が広かったのはメスの1頭で、富岡町から隣接する大熊町まで240ヘクタールの定住地域を中心に、南北に広く動いていることが分かった。
県が13年度に避難区域ではない福島市や二本松市で実施した同様の調査では、別の3頭の定住地域は30~51ヘクタールだった。
県自然保護課は「調査した個体数が少なく単純比較はできない」としながらも「避難区域で比較的、広範囲に定住しているのは、人が住んでいないため『圧力』がないことが一つの要因」としている。〔共同〕