青森県は20日までに、世界自然遺産の白神山地周辺などで近年目撃が相次いでいるニホンジカへの対策を強化すると明らかにした。実態調査や猟師の育成を進め、貴重なブナの原生林や農作物が食い荒らされるのを未然に防ぐ狙い。
2015年度当初予算案に、定点カメラ設置費や猟師の研修費など約1300万円を盛り込んだ。自然保護課は「シカは繁殖力が強く、いったん増えると手遅れになる。移動ルートを解明できれば効率よく対策できる」としている。
県によると、青森のニホンジカは明治時代に乱獲で絶滅したが、ここ10年で目撃が相次いだ。専門家の調査では、生息数の多い岩手県のシカと遺伝子型が同じで、沢や道路伝いに青森県内に入ってきた可能性がある。
昨年10月には世界遺産地域からわずか150メートルの地点にある環境省の定点カメラがニホンジカとみられる動物を撮影。関係者の間で危機感が高まっていた。
青森県は今秋にも、目撃数の多い県南東部や岩手、秋田との県境付近に定点カメラ約100台を設置。移動ルートの解明を目指す。また、県内の猟師にはシカなどの大形動物の狩猟経験が少ないことから、県外の猟師を招いての講習会も開く方針だ。〔共同〕