有明海で長年続く不漁は、ノリ養殖で使われている殺菌剤(酸処理剤)が原因として、福岡、佐賀、長崎、熊本の4県の漁業者や住民計200人が、使用を禁止しない国に1人当たり10万円の損害賠償を求める訴訟を5日、熊本地裁に起こした。4月中旬には約800人の漁業者らが追加提訴する予定で、原告は千人超となる見通し。
原告は福岡県が100人、熊本76人、佐賀23人、長崎1人。うち福岡、熊本の漁業者1人ずつは、酸処理剤使用を認めた水産庁通達が違法であることの確認も求めた。
訴状などによると、ノリの養殖では収穫量や品質を上げるため、ノリが付着した網を酸処理剤に浸して雑菌やノリ以外の藻の繁殖を抑え、再び海に戻す作業を繰り返す。
漁業者らは、海中に沈んだ酸処理剤の成分が赤潮や環境汚染を引き起こし、漁獲量が減少したとして「漁業権と環境権を侵害した」と主張している。
原告団長の熊本市西区の漁師、渡辺年勝さん(67)は提訴後、熊本市で記者会見を開き「酸処理剤をやめないと死の海になる」と訴えた。
水産庁栽培養殖課の担当者は「訴状が届いていないのでコメントできない」と話した。〔共同〕