肥満になったときに脂肪細胞が出すたんぱく質が糖尿病の引き金となっていることを大阪大の石井優教授らの研究グループが突き止めた。この働きを抑えると、症状を和らげることをマウスの実験で確かめた。新しい糖尿病の治療法になるとみており、5~10年後の実用化を目指す。米国科学アカデミー紀要(電子版)に7日、発表した。
肥満になると、脂肪細胞で炎症が起きる。すると、血糖値を下げるインスリンが効きにくくなり、糖尿病を発症すると考えられている。何が引き金となっているのかはわかっていなかった。
研究グループはマウスに高脂肪、高カロリーの食事を与え続けた。1週間目に脂肪細胞が出す「S100A8」というたんぱく質が増えており、免疫細胞の働きを活発にして炎症を引き起こすきっかけになっていることを突き止めた。
S100A8の働きを抑える物質を週に2回マウスに注射すると、インスリン注射の効果が高まったという。S100A8は人間にもあり、糖尿病治療薬の開発に役立つ成果としている。