世の中に出回るお札の量が増えている。2014年度のお札の平均流通量は前年度比3.5％増の87兆３千億円と、11年ぶりの高い伸びを記録した。13年度も同3.5％弱の伸びを示しており、２年間で流通量は６兆円増えた。日銀の異次元緩和で大量供給されたマネーが個人や企業に着実に流れ出している。

お札の流通量の増加は個人や企業が手元に置く現金を増やしていることを示している。日銀の資金循環統計によると、昨年12月末時点で家計が保有する現金は約60兆円。流通量の３分の２を個人が持っている格好で、景気回復を背景に、財布の中に多めに現金を入れるようになっている。

お札の流通量が増えたことで、実体経済が一段と活性化するとの見方が出てきた。三菱ＵＦＪモルガン・スタンレー証券景気循環研究所の嶋中雄二所長は「個人が手元に置くお札が増えたことで今後は消費が一段と伸びる」とみる。

一方で、お札の流通量の伸びは消費につながらないとの声もある。みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「お札の流通量の増加は、低金利の長期化で個人のタンス預金が増えたことを示しているにすぎない」と指摘する。