埼玉県熊谷市出身で車いすのシンガー・ソングライター、森圭一郎さん(37)がこのほど、手こぎ自転車「ハンドバイク」で日本縦断ツアーに出発した。「助け合うことが当たり前の社会」を合言葉に、出会った人々の支援を受けながら約4カ月かけて走る。9日に熊本県水俣市で走行中に転倒。顔などにけがをして入院したが、数日で退院できる見込みで、ツアーは再開する。
6日、鹿児島市の照国神社。友人ら約30人に笑顔であいさつし、力強くこぎ出した。道中は原則一人旅。車体は電動機付きで時速20キロを超えるが、段差や急な坂では助けが必要だ。
森さんは16歳の夏、事故で下半身不随になった。「もう世間には出られない」。絶望感の中、いつも音楽を聴いていた。18歳になり、思い切って高校の文化祭に出場して歌った。「障害者ではなく歌手として注目を浴びる喜びが衝撃的で、プロを目指そうと決めた」
代表曲は「一人じゃないから」。25歳でデビューし、200曲以上を制作。ユニークなヒーローたちが特別支援学校を訪ねるNHKの教育番組「ストレッチマン5」にも歌が得意な「パープル」役で出演している。
活躍の一方でもどかしさも。「助けてほしいけど断られたらどうしよう」「手伝いたいけど恥ずかしい」という“心の壁”を感じていた。
昨年9月、Loveの文字とハートでデザインした明るいピンク色の車いすマークを考案。付けた人は「助けて」「助けるよ」と気軽に声を掛け合う企画を立ち上げた。
「たくさんの人に出会いたい」。バイクにもマークが入った旗を立てた。ゴールは札幌市の札幌護国神社。各地でライブも予定している。「障害がある人たちが気兼ねなく街に出られるよう『心のバリアフリー』を広げたい」と願っている。
予定やツアーの様子は自身のホームページやフェイスブックなどに載せるという。〔共同〕