旅館・ホテル運営の星野リゾート(長野県軽井沢町)は2015年、3年ぶりに設計から建築までを手掛けた新施設をオープンする。高級温泉旅館「界」のブランドで鬼怒川温泉(栃木県日光市)に今秋開く。これまでは既存施設の運営受託が主体だった。コンセプトをフルに反映させてサービスの質を高める。「星のや」ではキャンプをテーマにした新業態を開始する。
星野リゾートが国内で運営している物件は3月末時点では33件に上る。15年は4件の新規開業を計画し、14年から倍増させる。4件のうち2件が12年に開業した「星のや竹富島」(沖縄県竹富町)以来の新築となる。
星野佳路代表は15日に開いた記者会見で「観光業の収益性を高めるために、大規模投資を加速させる」と述べた。
高級温泉旅館ブランド「界」では2施設を開く。鬼怒川温泉の「星野リゾート 界 鬼怒川」は、東京電力の保養施設跡地3万6000平方メートルに建設する。客室数は全48部屋で、11月10日に開業する。
「利用客はスロープカーで玄関口まで向かう」「ペットと一緒に泊まれる」「桜を臨める露天風呂」など、一から自社で手掛けることで施設の違いをアピールできるとみている。地元名産の陶器「益子焼」を使った演奏会を毎日実施するなど地域性も打ち出していく。料金は1泊3万2000円から。
石川県加賀市では温泉旅館「星野リゾート 界 加賀」を12月10日に改装開業する。客室棟を建て替えて従来の2倍の48室に増やし、露天風呂のある部屋を18室用意する。料金は1泊3万円から。大規模改装を実施しつつ、玄関の伝統的な加賀建築の部分はそのまま残す。
店舗網を拡大するなか、「全国で同じような施設にならないようにする」(星野代表)。「星のや富士」(山梨県富士河口湖町)では高級リゾートとキャンプを組み合わせた新業態に取り組む。河口湖周辺の6万平方メートルを開発し、10月30日にオープンする。たき火やバーベキューなどが楽しめる広場を用意する。
客室にはソファやベッドなどを備え、テントのように天候や虫などを気にせずに宿泊できる。1泊1室2人利用で4万5000円から。
新規の建築・建て替えの3件で投資額は合計で80億円となる見通し。これまで運営受託が事業の中心で、建物をそのまま利用することが多かった。宿泊業の人手不足などが広がるなか、「新築や建て替えの場合は、スタッフが働きやすいなどサービスの質を高められる」(星野代表)という。