【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)の欧州委員会は13日、移民・難民政策に関する重要政策集(アジェンダ)をまとめた。不法移民の急増に対応するため、密航船の取り締まりを強化する取り組みなどを盛り込んだ。EUの加盟国に対し、2020年までの5年間に取り組むべき政策を提言した格好だ。
欧州では、4月だけで1万人を超す移民・難民が事実上の無政府状態に陥っているリビアなどから地中海を渡って流入している。その対策が急務となっている。
政策集は(1)不法移民の流入削減策(2)地中海などを渡ってくる移民・難民の救助強化(3)域内の難民政策の強化(4)新たな移民政策――の4本柱からなる。欧州を目指す不法移民の削減策としては、密航船を見つけ出して破壊するための行動計画を早期に策定することを盛り込んだ。
人命救助策では、EUの国境警備を担っている組織の機能拡大や、多くの不法移民を送り出しているアフリカ諸国への支援強化などを明記した。緊急対策として、4月に開いた臨時のEU首脳会議で合意していた地中海上の救助活動などに向けた予算を3倍に拡大する方針も記した。
EUとして保護が必要だと認定した「難民」の受け入れを巡っては、EU全体で負担を分担し合う仕組みを導入することを提案した。5月末までに暫定措置を提案したうえ、年末までに恒久措置を示す計画を示した。
「難民」受け入れについてEUは加盟国ごとに分担の枠を設け「義務」としたい考えで、地中海に面する南欧に加え、独仏も支持している。だが英国など反発している加盟国もあり、実現のハードルは高そうだ。