【ルクセンブルク=森本学、イスタンブール=佐野彰洋】ギリシャ支援継続を巡って、欧州連合(EU)など債権団とギリシャ政府が年金削減と税制改革で対立している。18日にルクセンブルクで開いたユーロ圏財務相会合での交渉も難航が避けられない。6月末に金融支援の期限が迫る中、デフォルト(債務不履行)回避へ時間切れとの勝負になってきた。
ギリシャの年金は現役世代の保険料負担だけで給付を賄えず、政府が不足額を補填する状態が慢性化している。EUなどは財政赤字を膨らませる主因とみて、国内総生産(GDP)の1%(約18億ユーロ)の支給減額を要求。しかし、ギリシャが応じたのは約7千万ユーロの節約にとどまる。
軍や警察では、いまだに50歳代での年金の満額受給を許しているとされる。死亡した軍OBの娘が未婚ならば年金受給権の相続を認めるなど特例も温存されており、EU側には「気前が良すぎる」と不満が募る。
ギリシャにも譲れない事情がある。過去5年で大幅な年金減額を実施。ロイター通信によると平均受給額は4割近く減少した。さらなる年金減額は公約違反に直結する。
EU側は年金削減の代替案として、軍事費の削減も提案中だ。隣国トルコとの緊張関係などから、ギリシャの国防費は欧州平均を上回る。14年のギリシャの軍事支出は約56億ドル。GDP比で2.2%に達し、核保有国の英仏に並ぶ。
ただ与党・急進左派連合(SYRIZA)は単独で議会の過半数に届かず、右派の独立ギリシャ人党と連立を組む。国防相を務めるのが同党のカメノス党首。連立政権維持への配慮から、チプラス首相も軍事費に慎重にならざるを得ない。
税制改革では、EUなどは日本の消費税にあたる付加価値税(VAT)を問題視する。複雑すぎて多額の税収漏れを生んでいると批判。簡素な税制に改めれば、毎年GDPの1%の増収が見込めると提案している。
中でも焦点となっているのが電気代の税率。EUなどは13%の税率を23%に上げるよう提案。ギリシャは低所得者の生活を直撃することから電気代の税率据え置きを強く主張し、対立解消のメドはついていない。
国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は18日、30日に迫ったギリシャからの約15億ユーロの返済に「猶予期間はない」と明言。支払えなければ7月から即、ギリシャはデフォルト(債務不履行)状態に陥ると警告した。