【ブリュッセル=森本学】債務問題に直面するギリシャへの欧州連合(EU)などからの金融支援が30日で期限切れを迎える。同国のチプラス首相は同日、失効する支援とは別の新たな支援策をEUに求めたと明らかにした。ただ、財政緊縮策の受け入れでは譲歩姿勢を示していない。
EUは30日午後7時(日本時間1日午前2時)から緊急のユーロ圏財務相による電話協議を開くと発表した。ギリシャの新たな支援要請などについて話し合う見通し。
現行の支援の延長を巡る交渉は進展がみられていない。メルケル独首相は30日、「支援は午前0時(日本時間1日午前7時)ちょうどに期限切れを迎える」と語った。約72億ユーロ(約1兆円)の融資枠が消滅する。ギリシャのバルファキス財務相は30日、支払期限を迎える国際通貨基金(IMF)への約15億ユーロの債務を「返済しない」と語った。同日予定されていた年金の支払いについても「一部で遅れが生じる」と政府が発表した。ギリシャでは30日も預金の引き出し制限が続いた。
ギリシャ首相府は30日午後、ユーロ圏の金融安定網である「欧州安定メカニズム(ESM)」に債務再編を含む2年間の新しい金融支援策を申請したとの文書を記者団に配布した。ただESMによる支援にはユーロ圏加盟国の同意が必要。交渉には時間を要し、緊縮策の受け入れも条件となる見通しだ。
EU報道官によるとユンケル欧州委員長は29日夜、チプラス首相から電話を受けた。ユンケル氏はEUが求める財政緊縮案を受け入れるよう改めて求めたという。
EUは7月5日の国民投票の結果を受けてギリシャが緊縮策を受け入れた場合に備え、新しい金融支援の交渉を準備しているもようだ。
IMFは米国時間30日夕(日本時間1日午前7時ごろ)までにギリシャが返済しなければ、ラガルド専務理事が速やかに理事会に返済の延滞を報告して対応を協議する見通しだ。IMFによると最近では01年にアフリカのジンバブエが支払い延滞となったが、先進国ではギリシャが初めてのケースとなるという。
7月20日には欧州中央銀行(ECB)に対する約35億ユーロの支払いも控えている。
ギリシャのチプラス首相は29日、7月の国民投票で政権の意向に反して緊縮策が受け入れられた場合には退陣する意向を示した。