靴の販売店「ABCマート」を運営するエービーシー・マート(東京・渋谷)が都内2店舗で従業員に対し、労使協定で定めた残業時間を上回る月100時間超の違法な残業をさせたとして、東京労働局は2日、労働基準法違反容疑で法人としての同社と、労務担当取締役、店舗責任者2人の計3人を東京地検に書類送検した。
従業員に過酷な労働を強いる「ブラック企業」対策で、同労働局は4月に「過重労働撲滅特別対策班」を設置。大手企業を対象に調査を進めていた。同班による書類送検は初めて。
同労働局によると、同社は昨年4~5月、都内の「Grand Stage池袋店」と「ABC―MART原宿店」で従業員計4人に対し、労使協定で定めた上限(月79時間)や法定労働時間を超える月97~112時間の残業をさせていた疑いがある。いずれのケースも時間外賃金は適正に支払われていた。
同労働局は過去にも同社の店舗で長時間残業が横行しているとして是正勧告をしたが、改善がみられないため、書類送検に踏み切った。
同社は「今回の事態を重く受け止め、コンプライアンスに万全を期す」としている。同社ホームページによると、5月末現在の国内店舗数は約800店。従業員は約7500人で、うち約4200人がアルバイト。
違法な長時間労働で病気や自殺に追い込まれる人が後を絶たないとして、厚生労働省はブラック企業の監視を強化。今年5月には、年3回是正勧告を受けた大企業の社名を公表する方針を打ち出している。