【アテネ=佐野彰洋】欧州連合(EU)が求める財政緊縮策受け入れの賛否を問う5日のギリシャ国民投票は反対が61%と賛成を大きく上回った。チプラス政権は親EU野党の協力も得て政権基盤をかため、債権団側との再交渉に強気で臨む構えだ。一方でギリシャ国内経済は銀行の営業規制など混乱は広がっている。早晩に資金繰りに窮する可能性もあり、交渉は時間との闘いになりそうだ。
チプラス氏は6日未明(日本時間同日朝)にギリシャのパブロプロス大統領と会談。「強力な国民戦線が必要だ」として、各党党首との緊急協議の場を設定するよう要請した。EUなど債権団に対し債務再編などを要請していく考えを伝え、各党に協力を求める見通しだ。
最大野党の新民主主義党(ND)ではサマラス党首が辞任に追い込まれた。今後、NDなど親EUの野党はチプラス氏の求めに応じざるを得ないとみられる。チプラス氏は5日深夜、「双方が求める限り、持続可能な解決策はある」などと語り、反緊縮策の民意を得て債権団側に譲歩を迫る戦略を打ち出した。一方で債権団はチプラス政権に不信感を抱いており、再交渉が軌道に乗るかどうかは不透明な情勢だ。
6月29日に始めた預金引き出し制限など「資本規制」のギリシャ経済への影響は深刻だ。小額紙幣の不足から、預金者は制限額の上限60ユーロ(約8100円)さえ引き出すことができず、釣り銭の不足から、営業に支障を来す店舗もある。一部報道によると、ギリシャ中銀は60ユーロの上限を20ユーロに引き下げることも検討している。
ギリシャ銀行協会のトップは7月3日時点で国内銀行の手元資金は10億ユーロにとどまると説明。6日以降に払底するおそれが生じている。空のATMに現金を補充できない事態となればギリシャ経済は一層の混乱に陥る。EUや欧州中央銀行(ECB)の対応次第では、事実上の二重通貨となる「借用証書(IOU)」発行に追い込まれ、事実上のユーロ圏離脱となる恐れも残っている。