先制パンチというには、強烈すぎた。ゴール、ゴール、ゴール、ゴール。キックオフと同時に米国の攻撃が火を噴いた。5分間で2失点、16分までにさらに2失点。日本をぼうぜん自失とさせる、電光石火の攻めだった。
米に雪辱ならなかったなでしこ。(手前左から)大野、有吉、岩清水、阪口、澤=共同
先制、2点目はいずれもセットプレーから。ともに右サイドからサインプレー気味に低いゴロをゴール前へ蹴り込む。それに反応したのがいずれも背番号「10」のFWロイド。岩清水らが構える日本のとりでをものともせず、ボールへひた走り突き刺した。2012年ロンドン五輪決勝で2得点、日本に引導を渡した日本キラーに、またもややられた。センターラインからロングシュートまで飛び出して、ロイドは圧巻のハットトリック。
後に引けなくなった日本は33分に岩清水をベンチに下げる。細やかなラインコントロールと対応力で「なでしこ」の守備を支えてきたCBが、こんな形で交代を余儀なくされるのは前代未聞のことだ。守備は粉々にされ、岩清水は涙に暮れた。
日本は23分までシュート1本さえ打たせてもらえなかった。だが、どん底の逆境に陥ってからはいあがるのが「なでしこ」。岩清水にかわって入った澤を軸に、中盤の主導権を取り戻しにかかる。ボランチ阪口がCBに入るスクランブル態勢。選手の配置を変え、捨て身の反攻へ移る。27分。右へ大きく展開して川澄がカットイン。クロスに反応した大儀見は、うまくDFを受け流してすかさず反転。左足でゴールへ流し込んだ。
この一矢にとどまらず、日本は52分にも宮間のFKから2点目を奪う。ただ、米国優勢の流れは変わらない。スピーディーで、パワフルで、闘争心にあふれている。日本が盛り返してきたところで気勢をそぐようにCKから加点する力強さ。
それでも60分までに3枚の交代枠を使い切り、日本は全員で前に出た。澤がFKからゴール前に飛び込み、岩渕はドリブルでゴール前まで突っ走る。死に物狂いの反攻には見る者の胸を打つものがあった。だが序盤の4失点は重すぎる。連覇への夢と五輪の雪辱を期したファイナルで、「なでしこ」は力尽きた。(岸名章友)