そこに商機があると気付いた中国人が、日本の花王おむつを中国のネットショップで販売するようになったのです。当時は、タオバオという中国最大の通販会社「アリババ」運営のC2C、つまり個人出店型のネット通販が急成長する時期でもありました。出店者数百万人のうち、花王おむつを売っているショップは数えきれないです。
需要がどんどん大きくなり、結局、日本で大量にまとめ買いすることがどんどん増えてしまい、揚げ句の果てにドラッグストアの店頭では、中国語で「1人1個」の限定販売のチラシが貼り出される事態に及んだわけです。そして次第に東京、大阪、名古屋のような大都市のドラッグストアでは、購入制限が厳しくなり、大量の購入が難しくなりました。
そうすると、まとめ買いの輸入代行業者は、地方のドラッグストア、ひいては地方の問屋にまで足を運ぶようになり、日本の田舎のドラッグストアでも、花王おむつがまとめ買いされるようになったのです。
日本企業が付けた商品名を使わない
さて、読者の皆さんは、お気付きでしょうか? 私はこれまでずっと「花王おむつ」と呼んでいます。花王のおむつは、日本では「メリーズ」という名前で販売されています。中国語の訳名もあります。「妙而舒」と書きます。中国で正式に商標登録もしました。
しかし、中国人はこの名前を使わず、「花王尿不湿」と呼んでいます。「尿不湿」とはおむつのことです。「花王尿不湿」は、いまや1つの立派なブランド名のように中国人の中で定着しています。それこそ、SK-Ⅱは神仙水、アルビオンは健康水と呼ばれているのと同じように......。
日本企業が自ら考案した中国語名は、中国ではさほど定着せず、中国人が自発的に作り上げた名前は中国人の誰もが使うほど、むしろ大きな市民権を得ています。
名前だけではありません。そもそも、なぜ日本企業がお金をかけて苦労して中国に正規輸出しているのに、爆発的に売れる事例が少ないのでしょうか? 一方で、なぜ中国人の輸入代行業者が、日本の店頭で買って中国に転売しているだけで、こんなに大きなブームとなるのでしょうか?
正規輸入はしっかりと税金を払い、中国の小売りに対して販売するために場所代やマージンも払うので、個人輸入代行業者に比べると、価格面では高くなっているのは確かです。しかし、いまの中国人は所得水準が上がっており、安定供給されれば、多少高くても正規ルートから買うでしょう。
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