日本歯科医師会の政治団体「日本歯科医師連盟(日歯連)」を巡る政治資金規正法違反事件で、東京地検特捜部は30日、政治団体間の寄付の上限を超えた迂回寄付をし、収支報告書に虚偽の記入をしたとして日歯連前会長、高木幹正容疑者(70)ら3人を政治資金規正法違反(虚偽記入、寄付の量的制限など)容疑で逮捕した。高木前会長は現在、日本歯科医師会の会長を務めている。職域団体のトップが逮捕される事態に発展した。
政治団体「日本歯科医師連盟」が入る建物前に集まった報道陣(30日午後、東京都千代田区)=共同
ほかに逮捕されたのは日歯連前副理事長の村田憙信容疑者(70)、同元会長の堤直文容疑者(73)。関係者によると、高木前会長は容疑を否認し、村田前副理事長は会計操作については容疑を認めているもようだ。
迂回寄付が疑われているのは自民党の石井みどり参院議員を支援する「石井みどり中央後援会」と民主党の西村正美参院議員を支援する「西村まさみ中央後援会」に関する資金の移動。石井議員と西村議員はともに歯科医師で、日歯連の支援を受けている。
高木前会長と村田前副理事長の逮捕容疑は2013年1月と3月、石井みどり中央後援会に別団体から迂回寄付をする形で、法定上限(5千万円)を超える計9500万円を支出。翌14年3月、これらの資金移動について虚偽の記入をした収支報告書を提出した疑い。
また村田前副理事長と堤元会長の逮捕容疑は10年5月、日歯連から西村まさみ中央後援会に5千万円を寄付したにもかかわらず、11年3月に提出した収支報告書には西村議員が支部長を務める民主党支部に寄付したなどとする虚偽の記入をした疑い。
関係者によると、迂回寄付が疑われる資金はいずれも石井議員と西村議員の参院選に向けた準備活動に使われ、支援者名簿やビラなどの作成に充てられたとされる。
特捜部は4月末、政治資金規正法違反容疑で日歯連の本部(東京・千代田)や関係者の自宅などを家宅捜索。関係者数十人から事情聴取し、一連の資金の流れなどの実態解明を続けてきた。
高木前会長は6月、都内の会合で「(会計操作は)合理的な判断だった」と述べ、違法性はないとの認識を示していた。
日歯連を巡っては04年に自民党の旧橋本派への1億円のヤミ献金事件が発覚。この問題を受けて政治団体間の寄付の上限が年間5千万円に設定された。