【フランクフルト=加藤貴行】排ガス試験の不正問題で揺れる独フォルクスワーゲン(VW)の新車販売が、地盤の西欧市場で減速し始めた。英調査会社LMCオートモーティブによると、独英など主要5カ国の10月のグループ乗用車販売台数の合計は前年同月比2.5%減の20万1千台だった。5カ国全体は2%増の83万台。特にVWの大衆車ブランドが落ち込み、9月中旬の不正発覚の影響が出始めた。
LMCが独英仏イタリア、スペイン5カ国の各国の自動車工業会などの10月の統計をもとに、VWの主要5ブランドを調べた。VWブランドが2.7%減の10万2千台だったのをはじめ、傘下のシュコダが6.8%、セアトが12.3%の落ち込み。一方、高級車のアウディは3.6%増、ポルシェは8.8%増と市場平均を上回った。
不振が目立つのが西欧第2の市場の英国だ。英自動車工業会(SMMT)の5日の発表によると、VWが9.8%下回ったのを始め、セアトが32.2%、シュコダが3%のマイナス。英国全体も1.1%減と44カ月ぶりに前年実績割れだった。市場全体ではディーゼル車が2.1%減った。
西欧最大のドイツでは、全体の1.1%増に対しVWブランドが0.7%減、シュコダが13.3%減った。一方、フランスではVWグループが2.7%増と市場全体を2.1ポイント上回り、国ごとにばらつきはみられる。
VWグループの1~9月の世界販売台数のうち西欧は35%を占め、販売減少が続く中国を上回った。VWは欧州連合(EU)域内でディーゼル車850万台をリコール(回収・無償修理)する方針で、消費者への心理的な影響も大きい。不正はガソリン車にも広がりを見せており、11月には余波がさらに広がる可能性がある。