【ワシントン=河浪武史】オバマ米大統領は5日、日米など12カ国による環太平洋経済連携協定(TPP)の合意内容を議会に通知し、承認手続きを開始した。早ければ90日後の来年2月にオバマ大統領が正式に署名し、来年春にも米議会で批准に向けた法案審議に入る。ただ労働組合の反対などで与野党ともに慎重論があり、早期に審議入りできるか不透明だ。
オバマ大統領は5日に電子メールでの声明で「TPPは歴史上で最も水準の高い通商合意だ」と力説した。その上で「批准に失敗すれば、中国のような国が21世紀のルールを作ってしまうだろう」と議会に早期承認を求めた。
今年6月に成立した大統領貿易促進権限(TPA)法により、米大統領はTPPに署名する90日前に議会に意向を通知するよう義務付けられている。オバマ大統領は来年2月にも署名を終え、米議会との調整に入る。
ただ米議会の審議入りがずれ込むとの見方が早くも浮かんでいる。来年11月に大統領選を控え、民主党本命候補のヒラリー・クリントン前国務長官はTPPを現時点では支持しない意向を示している。支持母体の労働組合が雇用維持を重視してTPPに反対しているためで、議会民主党も慎重論が目立つ。
多数派の共和党は伝統的に自由貿易を支持するが、バイオ医薬品のデータ保護期間が短縮されたことに異論を唱えるなど、オバマ政権の「遺産(レガシー)」であるTPPには一定の距離を置く。共和党指導部は5日時点では「合意内容の詳細を再検討する」と判断を留保した。米議会は決裂を避けるために実質的な審議入りを先延ばしする可能性がある。
米通商代表部(USTR)のフロマン代表は5日「TPPが不成立になれば、雇用の喪失や賃金カットなど機会損失が大きい」と主張し、米議会の早期承認を求めた。米財務省も5日、TPPの参加12カ国で通貨対策の定例協議を設ける方針を発表した。米議会には新興国の通貨安を警戒する議員が多いため、為替操作の対策づくりをアピールする狙いだ。