東京都が2014年に都民へ実施した調査によると、主要ながん検診を「過去1~2年以内に受けた」とする回答が3割前後にとどまった。検診にかかる費用などがネックになっている。都は今後の政策目標をまとめた「長期ビジョン」で、都民のがん検診受診率50%の目標を掲げる。受診率向上には職場などでの集団的な取り組みがカギとなりそうだ。
胃、大腸、肺の部位別に過去1年の受診率を見ると、最も低いのは胃で27%だった。前回09年調査(26%)に比べてわずかに上昇したが、依然として3割を切っている。男女別では男性30%、女性25%。「受けたことがない」と回答した比率は42%で、前回(48%)よりは改善した。
胃の検診はバリウム検査か内視鏡検査が大半。いずれも体への負担を感じる人もおり、低い受診率の背景になっているようだ。他部位の全体の受診率は大腸が31%(前回26%)、肺が34%(同30%)と、それぞれ改善した。ただ、大腸は多くの人が便潜血検査にとどまり、より精密な内視鏡検査を受ける人は少ない。
女性向けの検診の受診率は乳房が32%(同29%)、子宮(けい部)が33%(同32%)。やや改善したが、受けたことのない人も約4割に上っており、行政などのPRが課題といえそうだ。
どのような環境が整えば、がん検診を受診する人が増えるかの質問(複数回答)では「費用の補助を受けられる」が最多の65%だった。「職場の定期健康診断などと同時に受けられる」(45%)、「複数のがん検診を一度に受けられる」(45%)が続いた。コスト面に加え、受診しやすい環境づくりも求められる。
都は17年度末のがん検診受診率50%を目標にすえ、がん対策を進める。職場単位での検診など集団的な予防策を進める企業への支援に取り組む。各種の検診を手がける区市町村と連携し、早期発見・早期治療の重要性を広く周知する。
調査は「都民の健康と医療に関する実態と意識」をテーマに、14年10月中旬~11月中旬に実施した。無作為に抽出した20歳以上の都民6403人から回答を得た。