【パリ=共同】修羅場を逃れた数十人を保護したアパート管理人。被弾した女性客を地下室でかくまった店員――。約130人が犠牲になったパリ同時テロの際、現場近くにいた無名の「ヒーロー」たちの冷静で勇気ある行動が、犠牲者の一層の拡大を防いだ様子が、欧州メディアの報道から浮かび上がった。
「銃撃や爆発の音がして、叫び声が聞こえてきた」。13日夜、コンサートを楽しんでいた観客80人以上が凶弾の犠牲になったバタクラン劇場近く。アパートの裏にいた管理人のホセさん(48)は、異様な物音で異変に気づいた。
劇場からは血相を変えた観客らが、次々に脱出してきた。ホセさんはとっさの判断で、約70人を裏庭に招き入れた。
水を飲ませるなどして励ますだけでなく、足を負傷した妊婦の手当ても。「テロリストがここまで来るのではないかと、気が気ではなかった」と悪夢の夜を振り返った。
カンボジア料理店で起きた銃乱射でも、近所に住むホセ・ビアナさん(47)が18歳と14歳の息子2人と外に出て門を開き、敷地を開放した。10人以上が急いで逃げ込み、銃撃がやむまで敷地内に隠れて命拾いした。
別の飲食店ではアルジェリア生まれのウエーター、サフェルさんがカウンターの奥に立っていた。銃撃でガラスの破片が飛び散り、店内は騒然となったが、隙を見て肩や手に銃弾を受けた女性客2人を店の地下室に引き込んでかくまった。