【ロンドン=小滝麻理子】英国のキャメロン首相は30日夜、過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)の掃討を目指し、2日にもシリア空爆参加について議会下院で承認を求めると表明した。キャメロン氏は「シリア空爆は英国の安全を守るために正しいことであり国益にかなう。空爆を支持する意見は増えている」と話し、賛成多数による可決に自信を示した。
パリで開かれていた第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)に参加していたキャメロン氏は、帰国後、首相官邸で語った。キャメロン氏は英軍をシリア空爆に参加させる是非について、1日の議会で「時間をかけて、広範に議論する」と強調。そのうえで、2日に採決を行う考えを示した。
この問題を巡っては、最大野党、労働党のコービン党首が同日、党議拘束をかけず、自由投票とする方針を表明。同党内の意見は割れており、シリア空爆に強く反対するコービン氏に対し、採決では同党の一部議員は賛成に回ると予想されている。野党からの支持も踏まえ、空爆が承認される可能性が高まっている。
英国は米主導の有志連合とともに昨年からイラクで空爆を続けていた。パリ同時テロを受けて、キャメロン氏は、空爆をシリア領にも拡大する必要性を訴えていた。
キャメロン氏は2013年にも、シリアの化学兵器使用を理由にアサド政権への空爆を目指したが、英下院に政府が提出した議案を否決された経緯がある。今年5月の総選挙で与党保守党が単独過半数の議席を押さえ、今回は議会承認を得られると判断したもようだ。
直近の英国内の世論調査では、約6割がシリア空爆参加を支持。これまではイラク戦争への反省から軍事行為の拡大に慎重な声も目立ったが、今年6月にチュニジアの観光地で起きたテロで多数の英国人が犠牲になったこともあり、世論にも変化が見られる。