【モスクワ=田中孝幸】ロシアのプーチン大統領は15日、モスクワでケリー米国務長官と会談した。4年半にわたって続くシリア内戦について、11月に関係国外相が合意した和平への取り組みを加速することで一致。過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)に対する共闘を確認したほか、18日にニューヨークでシリア問題に関する多国間の外相級会合を開くことも申し合わせた。
ケリー氏は会談後、親ロのアサド政権と敵対する複数の反政府勢力のうち、どのグループが今後の和平協議に参加するかについてロシア側と「一定の共通点を見いだした」と強調。国際テロ組織アルカイダ系「ヌスラ戦線」とISを和平協議から除外する方針を示した。
欧米ロなどの関係国は11月の前回の外相級会合で6カ月以内の暫定政権発足を柱とした和平案をまとめた。ただ、ロシアは和平協議に参加する反政府勢力のリスト作りで各国が合意できていないとして、米国が提案した18日の次回の外相級会合の開催に慎重姿勢を示していた。
今回の会談に同席したロシアのラブロフ外相は「米ロが同じ方向で協力すれば(和平への)前進が可能だと示した」と言明。18日の多国間協議に参加する意向を示したうえで、和平案を盛り込んだ国連安全保障理事会決議の早期採択を目指す考えを明らかにした。
ケリー氏はプーチン氏にシリアでアサド政権の支援のためにロシアが続けている空爆について「反政府勢力の穏健派への攻撃を控え、ISだけを標的にすべきだ」と求めた。ケリー氏によるとプーチン氏は要請を熟慮する考えを示したうえで、シリアでの米ロ両軍による不測の事態を避けるための調整の必要性を指摘したという。
一方、ケリー氏はアサド大統領の今後の処遇に関し「続投は不可能だ」との考えを表明。アサド政権の後ろ盾であるプーチン氏との立場の隔たりは埋まらなかった。
会談では米ロが対立するウクライナ問題も協議した。ケリー氏は2月に同国とドイツ、フランス、ロシアの4カ国がまとめたウクライナ東部の和平合意が完全に履行されればロシアに対する制裁を緩和する考えを重ねて示した。