東日本大震災で大きな被害に遭った宮城県石巻市でオリーブの試験栽培が行われている。寒冷地で育てるのは簡単ではないが、本場・香川県小豆島町の農家も協力し、「北限のオリーブ」を成功させ、復興の象徴にしようと意気込んでいる。
「こいつらも一度冬を我慢すれば、寒さに慣れると思うよ」。石巻市から今年、オリーブ栽培を委託された農事組合法人「みのり」代表理事の千葉昭悦さん(66)は10月下旬、いとおしそうに緑の木々を見つめた。冬を越え、立派な実を付けてほしいと願う。
オリーブは平和のシンボルとされることから、震災の復興にも役立てたいと、香川県出身の応援職員や地元のNPO法人が昨夏、離島と半島部にそれぞれ15本ずつ試験的に植えた。
そのうち、約25本が越冬して手応えをつかみ、市も加わって石巻の特産品に育てようと、今夏は「みのり」の土地に100本を加えた。
技術協力するのは、小豆島町のオリーブ農園「アライオリーブ」の荒井信雅さん(56)。依頼を受け「震災当時は何もできなかった。北限のオリーブにチャレンジして、復興の手助けをしたい」と快諾した。
荒井さんや石巻市によると、オリーブは根が凍らなければ、氷点下の気温でもある程度耐えられるという。ただ、ゾウムシといった天敵の駆除が必要で、千葉さんらは一本一本の状態を気にしながら日々手入れしている。
津波で自宅が流され、いまだ避難生活を送る千葉さんは、2020年東京五輪・パラリンピックを目標としている。メダリストにオリーブの葉でつくった王冠を贈り、選手たちが上質のオリーブオイルを味わっている姿を見るのが夢だ。
千葉さんは「石巻のオリーブがブランドとして認められ、五輪で復興の象徴になったらな」と笑顔で話した。〔共同〕