日銀大阪支店は1日、近畿2府4県の3月の企業短期経済観測調査(短観)を発表した。全産業の業況判断指数(DI)はプラス3と昨年12月の前回調査を5ポイント下回った。大幅悪化は7四半期ぶり。スマートフォン(スマホ)販売低迷や中国経済減速に円高が重なり、製造業の大企業が悪化した。中小企業も減速した。全産業の先行きはマイナス1で、経営者は慎重な見方を示している。
DIは業況が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を差し引いた値。2月25日~3月31日に1495社を調査した。規模別にみると大企業がプラス10と前回から8ポイント悪化した。中小企業もマイナス6と7ポイント悪化した。
業種別では製造業がマイナス3と7ポイント悪化し、10四半期ぶりのマイナスとなった。近畿圏は輸出企業の割合が比較的高く、下落幅が全国より大きかった。電気機械の業種別DIはマイナス10(前回はプラス11)だった。
京セラの山口悟郎社長は「スマホ向けがよくない。2016年前半ぐらいまでは低迷するのではないか」と話す。
製造業の中小企業はマイナス10(同マイナス2)と下落幅が拡大した。
金属加工の梅南鋼材(大阪市)の堂上勝己社長は「昨年11月ごろから中国経済の減速で産業機械や建設機械向けの受注が振るわない」と話す。熱交換器などの山科精器(滋賀県栗東市)も「船舶向けは1年程度の受注はいっぱいだが、その先の商談は減っている」(大日常男社長)という。
非製造業はプラス8(同プラス11)に悪化した。暖冬で冬物衣料の荷動きが鈍く、卸や運輸が低迷した。消費者は外食などの購買行動に慎重で、宿泊・飲食サービスはマイナス3と前回から13ポイント悪化した。中小企業でも人件費上昇や人手不足が響いたとみられる。
回転ずし大手、あきんどスシロー(大阪府吹田市)の水留浩一社長は「2月以降の既存店客数が前年同期より弱含んでいる。消費者心理の冷え込みなどが重なったようだ」と話す。
「年初からの円高・株安への懸念が足元の業況判断の引き下げに影響したのではないか」(日銀大阪支店の福沢恵二営業課長)とみている。もっとも景気が一気に悪化しているわけではなさそう。非製造業は観光資源が多く、アジア圏へのアクセスが便利な関西国際空港があることが下支えとなっている。「インバウンド(訪日外国人)の悪化を指摘する声はほとんどない」(同)という。
15年度の全産業の経常利益見込みは前の年度比13.9%増。14年度の17.2%増に並ぶ高い伸びだった。16年度は反動で3.3%減の見込みだが高水準を維持しそうだ。
製造業の設備投資額(土地投資額含む)も16年度計画は2.7%増と高水準だった15年度見込み(14.9%増)並みを確保しそうだ。在庫や設備の過剰感も少ない。
借入金利水準判断(「上昇」から「低下」を引く)は全産業でマイナス33と23ポイント低下した。マイナス金利政策を受け、企業が金融機関から資金を借りる際の利率にも影響が出始めたようだ。