倒壊した民家に取り残された人を捜す警察の救助隊=16日午前6時44分、熊本県西原村、上田幸一撮影
熊本市から東に約20キロ。西原村は、阿蘇外輪山のふもとにある。16日未明の揺れで、のどかな村は一変した。道路は大きくうねり、深い溝が刻まれた。あちこちでぺしゃんこにつぶれた家屋が連なる。
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「ドーン」と突き上げられる揺れで、同村の団体職員川元博美さん(58)は目を覚ましたという。前夜の揺れより激しく縦に横に揺さぶられ、ベッドに必死でしがみついた。窓がボキボキと音を立てて外れ、壁も折れ始めた。
そこから記憶ははっきりしない。気がつくと真っ暗な中で、1階がつぶれた家の前に立っていた。大声で家族を呼ぶと、1階にいた長男も2階にいた妻も無事だった。
隣家も1階がつぶれていた。隣人から「両親と妻が閉じ込められている」と聞き、助けを求めて近所を回った。消防団も駆けつけ、やがて3人を担ぎ出したが、父親は意識がない。「容体が心配だ」と川元さんは気にかける。
「母も伯母もダメかもしれん。まさかここで地震が起きるなんて」。崩れた家屋の前で住民の男性(53)はつぶやいた。地震の発生時、家にいたのは6人。男性は2階で寝ており、気づいた時には家具に挟まれていたという。2階にいた10代の息子2人と窓から逃げた。
1階では、男性の両親と伯母が寝ていた。自力で脱出した父とがれきをかき分けて、母を外へ出したが、意識がない。伯母も助けようとしたが、無理だった。消防隊員から「すでに体は冷たい。蘇生は難しい」と説明されたという。
別の住民の男性(36)は揺れの際、自宅1階にいた。跳び起きて、母(63)と祖母(84)を家の外に連れ出したが、2階建ての家は、直後に音を立てて崩れた。「体が反射的に動いた。無我夢中、危機一髪だった」
村によると16日午後現在、村内で5人の死亡が確認され、建物の倒壊件数は集計中という。村内で民宿を経営する男性(62)によると、近所の牧場で牛小屋が全壊した。「牛2頭が下敷きになっているようだ」と男性は話した。