パルミラの古代都市遺跡。過激派組織「イスラム国」(IS)が一部を破壊したベル神殿(奥)近くで、ロシア軍の地雷除去作業による煙が上がっていた=14日午前、シリア・パルミラ、矢木隆晴撮影
シリア中部パルミラにあるユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産アラブ城は、石積みの城壁や石橋が所々で崩れ落ちていた。昨年5月から約10カ月にわたってパルミラを支配した過激派組織「イスラム国」(IS)と、アサド政権軍の戦闘により、損傷を受けたとみられる。
朝日新聞記者が14日、アサド政権がパルミラを奪還した後に日本メディアとして初めてアラブ城を訪れた。現地当局の許可を得てドローン(小型無人飛行機)を使って映像を撮影した。
中世に建てられたアラブ城は、世界的な歴史遺産であるパルミラの古代都市遺跡から約2キロ北西に位置する。1980年、古代都市遺跡とともに世界遺産に登録された。元々は13世紀にとりでとして建てられ、オスマン帝国時代の17世紀にはレバノン一帯を支配した領主ファクル・エド・ディーンが所有した。
アサド政権軍が奪還した現在も、城を囲むようにロシア軍とアサド政権軍の兵士が警備にあたる。
城がある岩山は、パルミラ市域一帯を360度見渡せる戦略上の要衝だ。
高さ約150メートルのこの岩山に登ると、城の敷地の至る所に薬莢(やっきょう)が落ちており、攻防戦の激しさを物語っていた。この場所から、ISが本殿と列柱を爆破したベル神殿、大部分が破壊されてがれきとなったバール・シャミン神殿、アーチ部分がなくなった凱旋(がいせん)門の跡が見渡せた。
周辺にはISが地雷を敷設したため、ロシア軍が除去作業をしており、記者の立ち入りは認められなかった。
岩山のアラブ城わきで取材していると、「バーン」というすさまじい爆発音とともに、爆風を感じた。城の眼下数百メートルから白煙が上がった。アサド政権軍によると、ISが支配する東部デリゾールへつながる幹線道路に仕込まれた対戦車地雷を、ロシア軍が爆破し、除去した瞬間だった。(パルミラ=春日芳晃)