大規模な土砂崩れがあった阿蘇大橋付近。国道57号とJR豊肥線が埋まり、捜索は始まっていなかった=18日午後3時48分、熊本県南阿蘇村立野、朝日新聞社ヘリから、上田幸一撮影
16日未明の地震で、土砂災害が集中した熊本県南阿蘇村。安否がわからない人たちの捜索が各地で続く。阿蘇大橋の崩落現場では、大学生1人が巻き込まれた可能性があることが18日に新たにわかったが、被害が激しく捜索は手つかずだ。刻々と時が過ぎるなか、家族らは「早く見つかって」と焦りを募らせた。
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男子大学生と連絡取れず 阿蘇大橋付近?足取り途絶える
18日夕、6人が安否不明になっている南阿蘇村河陽の高野台地区。「今助けますよ」「聞こえたら、返事をして下さい。頑張りましょう」。土砂崩れに襲われた住宅周辺を捜索していた警察官が、土砂の中で見つかった人に大声で呼びかけた。反応はない。
約1時間後。土砂から引き上げられた人は担架で運ばれていった。心肺停止状態の女性で、その後、死亡が確認された。熊本県警は安否不明者の可能性があるとみて身元を確認している。
夫の友光さん(65)と連絡が取れないという前田和子さん(61)は前日に続いて現場を訪れ、早朝から捜索を見守った。「生きていてほしい。顔が見たい」。声を震わせて、そう語った。
自宅の1階が土砂で埋まった田爪晴恵さん(43)は、掘り起こされる自宅をじっと見つめていた。家族3人は全員無事だった。だが、隣家は押しつぶされ、住人の女性の安否は不明だ。2週間前に「ワラビが出てるよ」と、摘んだワラビをくれた際の会話が最後だったという。「やさしくて、きれいな人でした。無事に見つかってほしい。それだけです」と涙ぐんだ。
宿泊客の鳥居敬規(たかのり)さん(42)と妻の安否が分かっていなかった同村長野の「ログ山荘火の鳥」では、2人がいたとみられる宿泊棟周辺を捜索。夜になって鳥居さんが心肺停止状態で見つかり、死亡が確認された。捜索は深夜まで続けられる予定だったが、午後9時前に起きた強い余震の影響で中止を余儀なくされた。(稲垣千駿、小野太郎)