地震でガスが停止した住宅で開栓する西部ガスの担当者=26日午後、熊本市中央区、柴田秀並撮影
熊本地震では熊本県内の都市ガス供給エリアが軒並み被災し、西部ガス(福岡市)は安全のため、県内の契約戸数の大半にあたる10万あまりの供給をいったん停止した。東京ガスなどからも応援が駆けつけ、倒壊家屋などを除き8割近くまで供給が可能になったが、実際に使えるようにする開栓作業は手間がかかる。
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熊本地震 災害時の生活情報
「ガスの開栓にうかがいました」。26日午後、熊本市中央区の住宅街では、西部ガスの社員が2人1組で各戸を訪問していた。1人がガスメーターを解除し、もう1人が室内で異常がないかを確認する。
この住宅街では10日ぶりにガスが復旧した。開栓をした家に住む舛田睦子さん(73)はこれまで、風呂に電気式のやかんでお湯を沸かして入れていた。「何とかしのいできたけど、本当に助かります」と話した。
ガスを多く使う飲食店では復旧の効果は大きい。同区の創作和食店「ささのダイニング」では27日朝にガスが復旧した。これまではメニューを絞り込み、プロパンガスなどでしのいだ。同日夜から通常のメニューに。店のチーフの増満恭平さん(28)は「仕事が元通りにできるのがうれしい」と語った。
ガス会社は地震の揺れが一定の基準を超えると、ガス漏れによる災害を防ぐため、ガスの供給を止める。熊本地震では大きな被害を受けた熊本県益城町をはじめ、熊本市など供給エリアの大部分が被災して供給を停止。ガス管の安全を確認したうえで再開している。
全国のガス会社の応援を受け、4500人規模で復旧作業を進める。27日午後6時時点で対象の約77・5%にあたる約7万8千戸向けに供給を再開した。
ただ実際にガスが使えるようになるには、住民の立ち会いによる開栓作業が必要だ。避難所に避難している住民もいて、平日は訪問しても半分ほどがいないこともある。開栓まで完了したのは5割強という。
九州電力の停電は20日には解消したが、西部ガスが対象戸数に供給が可能になるのは今月末の見込みで、開栓まで終わるのはさらに先という。西部ガスは訪問時の在宅を呼びかけているが、詳細な時間が示されていないなどの不満の声もある。このため28日午後6時ごろから同社ホームページに開栓専用の受け付け画面を設け、希望時間帯を選べるようにする。
ガス会社は、「オール電化」を売り込む電力会社と競争しており、早期の復旧は顧客確保のためにも重要だ。酒見俊夫社長は27日の記者会見で「ガス事業の特性上、復旧にはある程度日数を割かざるをえない。ご理解頂きたい」と述べた。
西部ガスが27日発表した2016年3月期決算は売上高が前期比8・8%減の1903億円、純利益が同40・7%減の22億円だった。液化天然ガス(LNG)価格が下がって都市ガスの料金単価も下がったため、6期ぶりの減収となった。純利益はLNG調達に絡んで特別損失を計上したことで減益となった。(柴田秀並)