ストックホルムで14日に開かれたユーロビジョンで「1944」を歌うウクライナ代表のジャマラさん=AP
欧州最大の国別対抗の歌謡祭「ユーロビジョン」の決勝が14日、スウェーデンのストックホルムで開かれ、ウクライナ代表の女性歌手ジャマラさんが優勝した。歌った曲「1944」は、旧ソ連の独裁者スターリンによるクリミア・タタール人追放の悲劇を題材にしており、ロシアからは「政治的な審査だ」と反発が上がっている。
ジャマラさん自身が、一昨年にロシアに併合されたクリミア半島の先住民クリミア・タタール系だ。ウクライナのポロシェンコ大統領はツイッターに「信じられないようなパフォーマンスと勝利だ」と書き込み、勝利を祝福した。開催国スウェーデンのバルストロム外相も「1944年とその後のクリミア・タタールの運命を思い出すべきだ」とツイート。ロシア併合後のクリミア半島で、クリミア・タタール人の自治が制約されていることを懸念する発言だ。
ユーロビジョンは、各国の視聴者とプロの審査員による投票の合計で結果が決まる。共に自国代表には投票できない。視聴者投票ではロシア代表が首位だったが、審査員の投票との合計得票でウクライナ代表が1位になった。審査員投票では、ロシアとウクライナは互いの代表に1点も与えなかった。
ロシア下院のプシコフ国際問題委員長は「ユーロビジョンは政治闘争の舞台となった」と反発。ロシアメディアからは結果の見直しを求める声も上がっている。優勝したウクライナは来年のユーロビジョン開催国を務めるため、騒動は尾を引きそうだ。
ただ視聴者投票の結果を見ると、ウクライナからはロシア代表に最高の12点、ロシアからはウクライナ代表に次点の10点が投じられていた。多くの人は、政治と音楽は別と考えていることがうかがえる。(モスクワ=駒木明義)