24日、墜落したエジプト航空機の犠牲者を悼み、カイロにあるジャーナリスト組合の前でろうそくに火をともす人たち=AFP時事
パリ発カイロ行きエジプト航空804便(乗客乗員66人)の地中海墜落で、同機がレーダーから消える直前に操縦室の窓の温度が上昇していたと、エジプトの政府系アハラム紙が25日に報じた。操縦室付近で何らかの異常が起きていた可能性がある。ただ、26日で墜落から1週間になるが、墜落原因を特定する手がかりは得られていない。
同紙が独自入手したという同機からの電子情報の記録によると、804便は離陸後、11回の電子情報を発信。エジプト時間の19日午前2時26分、操縦室の副機長席右側の窓の温度が上昇しているとの情報が届いた。その3分後に機影がレーダーから消えたという。
同機の状況については、フランスの航空事故調査局が通信記録から、墜落直前に機内で煙を検知したとする警告が出ていたと明らかにし、専門家は「操縦席そばのトイレと電子システムで煙を検知した」と指摘している。
火災が起きた可能性が考えられるが、墜落原因は依然として不明だ。エジプトのシュクリ外相は24日、米テレビNBCに「テロか技術的問題か、あるいは別の要因か。現段階で予測できない」と述べた。
昨年10月にエジプト東部のシナイ半島でロシア機が墜落したとき、過激派組織「イスラム国」(IS)は直後に犯行声明を出した。今回はどこからも声明はでていない。
804便がレーダーから消える直前の状況についても情報が交錯。ギリシャのカメノス国防相は、同機は左方向へ90度、さらに右方向へ360度旋回し、高度1万1千メートルから約3千メートルに急降下したと述べた。だがエジプトの航空管制会社幹部は「同機は旋回も急降下もしていない。高度1万1千メートルを保ったままレーダーから消えた」と説明した。
原因究明には、飛行状況や操縦室内の会話を記録したブラックボックスの回収が必要だ。エジプト政府は水深3200メートルまで探査できる無人潜水艦を投入。だが、墜落した海域にはさらに深い場所もあるといわれる。ブラックボックスが発見のための音を発信できるのは、墜落から約30日だという。(カイロ=翁長忠雄)