一回表、左前安打を放つ盛岡大付の比嘉賢伸君=19日、阪神甲子園球場、柴田悠貴撮影
(19日、高校野球 盛岡大付12―7済美)
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19日の第1試合に出場した盛岡大付(岩手)の主将・比嘉賢伸(けんしん)君(3年)は、いつも応援してくれていた祖父が大会直前に病気で亡くなった。祖父の指輪を託された比嘉君は、その思いを胸にグラウンドに立つ。
比嘉君が野球を始めたのは小学3年生の時。祖父の武一さんは近くに住んでいたこともあり、毎日のように一緒にキャッチボールをしたり、テレビで野球中継を観戦したりした。チームに入ると、武一さんは暇を見つけては練習や試合を見にきて、応援してくれた。
「賢伸は初孫で、本当にかわいがられていた」と父の武博さん(47)は話す。比嘉君も「おじいちゃん子でした」と振り返る。比嘉君が大阪市の実家を離れ、盛岡大付に進学してからも武一さんは電話で連絡を取り続け、昨夏の選手権大会に出場した時は甲子園で応援した。
しかし、がんと闘病してきた武一さんは今年の岩手大会中に病状が悪化。「厳しいかも知れない」と息子に伝えた武博さんは、「お守りと思って」と、武一さんが左手薬指にはめていた指輪を渡した。比嘉君はそれ以来、ひもにつけた指輪を首からぶら下げている。
岩手大会では本塁打2本、打率は4割以上の活躍でチームを引っ張り、2年連続の優勝を達成した。甲子園入りを見届けたかのように、武一さんは3日深夜、75歳で死去した。
比嘉君は選手権大会に入ってからも好調で、初戦は昨年の優勝校の作新学院(栃木)を相手に2安打を放って勝利。松商学園(長野)との2回戦では本塁打を打ち、「おじいちゃんに見せたかった。でも、指輪で力をもらった」と話した。ホームランボールを受け取った武博さんは仏壇に供え、「あいつ、打ったよ」と報告した。
19日の済美(愛媛)との試合も最初の打席で安打。チームはリードされながら九回に追いつき、延長戦の末12―7で勝利。比嘉君は「おじいちゃんの支えがあったから、あきらめずに戦えた」と、準々決勝に向けて意気込んだ。(寺沢尚晃、高島曜介)