俳優の戸田菜穂さん=東京都目黒区、西田裕樹撮影
■俳優・戸田菜穂さん(42)
「被爆国から」バックナンバー
特集:核といのちを考える
去年暮れに仕事で広島へ帰ったとき、父から「読んでみて」と体験記のコピーを渡されたんです。原爆の後、歯科医だったおじいちゃんが救護班として現場へ駆け付け、夜も寝ずに治療を続けた様子が書かれていた。初めて知りました。
戸田さんの亡き祖父・幸一さんは広島県可部(かべ)町(現・広島市安佐北区)の戸田歯科医院の院長だった。原爆投下直後、広島市近郊の寺でけが人の救護にあたった。その5年後、「平和を念じて」と題した体験記を広島市に寄せていた。
《(患者は)一人、二人と、丸太棒を倒す様(よう)に倒れ始めた。其(そ)の肉に、ガラスの破片が食ひ込むのに、のたうち廻(まわ)り、其の内(うち)動かなくなる。(略)子供に迄(まで)このむごさはどうだ。地獄だ。(略)自分はこの時位(くらい)、医者と云(い)ふ天職に感激した事はない。よしやるぞ》
治療にあたったお寺は実家の近…