試合終了後、スタンドへのあいさつを終えて戻る大曲工の選手たち=阪神甲子園球場、越田省吾撮影
(10日、高校野球 花咲徳栄6―1大曲工)
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どこまでも食らいつく粘り強さ。大曲工(秋田)は大会屈指の左腕、花咲徳栄(埼玉)の高橋昂也(こうや)君(3年)に食い下がり、2桁の安打を放った。だが、及ばずに1―6で敗れた。
秋田県南部の豪雪地帯にある県立高。メンバー全員が地元出身。11月下旬には雪が積もり始める。20年前、当時の保護者会長が廃材を集めて作った室内練習場は8人が素振りをすればいっぱい。トレーニングルームも入れるのは15人ほどだ。
残りの部員は長靴を履いて、屋外で練習する。阿部大樹監督がブルドーザーでグラウンドの雪を固め、蛍光色の球でキャッチボールをする。「手がジンジンして痛かった」と主将の高橋陽喬(ひだか)君(3年)。球が雪に埋もれれば、その都度素手や足で掘り出した。
昨春の選抜大会出場チームは、有名な大曲の花火にちなんで「花火打線」と呼ばれた打撃のチームだった。だが、今年は「強みがなかった」と阿部監督。
「自分たちは弱い。粘り強くやらないと」。チームワークを武器にしようと、室内練習場に掲げた看板「笑顔・結束・全国制覇」を合言葉に練習に励んだ。
春になり雪が溶けると、朝7時からノック練習に取り組んだ。阿部監督が練習中に「満足したか」と度々聞いても、「まだです」と食らいついた。
成果は表れ、甲子園で失策は一つだけ。秋田大会でチーム打率2割に満たなかった打線も奮起した。九回裏1死、代打栗谷川陽太君(2年)が内野安打で出塁し意地をみせ、高橋航平君(2年)の安打で好機をつくった。ベンチからは「つなげ」と声が飛んだが、後続が倒れてゲームセット。
高橋主将は目を赤くしながら言った。「練習はつらかったけど、この仲間だからここに来られた。粘り強さは負けてなかった」(石川春菜)