後輩に事故の経験を伝えているJALスカイの伊藤由美子さん=7月6日、東京都大田区
520人が亡くなった日航ジャンボ機墜落事故から12日で31年を迎えた。墜落現場となった群馬県上野村では、遺族たちが御巣鷹の尾根に慰霊登山をし、追悼式で祈りを捧げた。
大阪府豊中市の陶山(すやま)陽子さん(73)は、夫林邦(しげくに)さん(当時50)の慰霊に訪れた。慰霊登山は31年連続で、「30年で最後と思ったけどやめられなかった」という。
いくら時がたっても、毎年8月が迫ると食欲がなくなり、尾根に登った翌日に回復する。「気持ちの中で、夫の存在が今もそれだけ大きい」と思う。遺体の顔は見なかったから、今も記憶の中に「スポーツマンでハンサムな夫」がいる。「今は単身赴任の主人に会いに来ている気分」と話し、墓標に花を供えた。
奈良県御所市の田仲威幸さん(66)は、妹一家の墓標に手を合わせた。事故機に妹とその夫、生後3カ月の娘が乗っていた。事故から31年がたち、3人を知る親戚も少なくなった。だからこそ「私が来なければ」と思う。墓標に「来年も来るからね」と声をかけた。
日本航空によるとこの日、77家族273人の遺族が尾根に登った。日航の植木義晴社長も慰霊登山し、「安全の原点が、この御巣鷹の尾根にあることを肝に銘じている。決して忘れてはならない原点」と話した。(篠原あゆみ、伊藤嘉孝)